
育休手当(育児休業給付金)の支給額は、「いつの給与」が基準になるかで大きく変わります。
「残業代は入る?」「時短勤務で復帰したら減る?」
特に、月の途中で育休に入る方や、2人目以降の取得を予定している方は、計算方法が複雑で不安になりますよね。
この記事では、育休手当の計算に使われる給与の遡りルールを徹底解説します。
2025年最新の支給限度額や、月途中開始の具体的な扱い、そして2人目の育休で損をしないための注意点まで、あなたの疑問をすべて解消します。
Table of Contents
育児休業給付金(育休手当)の支給額は原則として、育休開始前の直近6か月間の給与を基に算出される「休業開始時賃金日額」によって決まります。
- 育休開始前6か月の給与が計算基準
- 賃金支払基礎日数11日以上の月が対象
- 支給額の計算式と支給率
- 支給額の上限額・下限額
育休開始前6か月の給与が計算基準
育休手当(育児休業給付金)の計算に使われる給与は、育休開始前の直近6か月間の給与です。
具体的には、育休を開始する日の前日から遡って、賃金支払基礎日数が11日以上ある月を6か月分集計します。
その6か月間をもとに「休業開始時賃金日額」を算出します。「休業開始時賃金日額」の計算式は、以下です。
休業開始時賃金日額 =育休開始前 6か月間の賃金総額 / 180日
「賃金総額」には「基本給」「残業代」「通勤手当」「各種手当」など、労働の対価として支払われたすべての給与が含まれます。
例えば、2025年10月15日に育休を開始する場合、2025年4月から9月までの6か月間の給与が計算対象となります(各月の賃金支払基礎日数が11日以上の場合)。
- 育休開始前の直近6か月間の給与が対象
- 賃金支払基礎日数が11日以上ある月を6か月分選ぶ
- 育休開始日の前日から遡って計算
- 基本給、残業代、交通費、各種手当が含まれる
賃金支払基礎日数11日以上の月が対象
育休手当の計算対象となるのは、賃金支払基礎日数が11日以上ある月です。
11日未満の月は原則として除外され、さらに前の月を遡って計算対象月を選びます。
賃金支払基礎日数とは、給与計算の基礎となった日数の合計です。
具体的には出勤日数、有給休暇日数、休日出勤日数などの合計。
11日という基準は、1か月の約半分に相当するため、その月の給与が通常の給与水準を反映していると判断される目安になります。
11日未満の月は、欠勤などで通常の給与水準を反映していないと見なされます。
例えば、6月の賃金支払基礎日数が8日の場合、6月を除外し、5月、4月、3月、2月、1月、12月の6か月で計算します。
- 賃金支払基礎日数11日以上:原則として計算対象
- 賃金支払基礎日数11日未満:除外し、前の月を遡る
支給額の計算式と支給率
育休手当の計算式は、休業開始時賃金日額=育休開始前6か月の賃金総額÷180日です。
この賃金日額に支給日数(育休取得日数)を掛け、さらに支給率(67%または50%)を掛けたものが実際の給付額になります。
| 項目 | 計算式 | 支給率 |
| 最初の180日間 | 賃金日額 × 支給日数 × 67% | 67%(手取りに近い水準) |
| 181日目以降 | 賃金日額 × 支給日数 × 50% | 50% |
給付額は、育休開始から180日目まで支給率67%です。
それ以降は支給率が50%に変更されます。
賃金日額: 2,880,000円÷180日 = 16,000円
1か月(30日)の給付額(180日目まで): 16,000円× 30日× 67% = 321,600円
1か月(30日)の給付額180日目移行: 16,000円× 30日× 50% = 240,000円
支給額の上限額・下限額
休業開始時賃金日額には、年金制度と同様に上限額と下限額が設けられています。
計算の結果がこれらの額を超える、または下回る場合は、上限額・下限額が適用されます。
これを超える場合は上限額・下限額で計算されます。上限額・下限額は、毎月勤労統計の平均定期給与額の増減をもとに毎年8月1日に改定されます。
- 休業開始時賃金日額の上限 16,110円
- 休業開始時賃金日額の下限 2,869円
月の途中で育休に入る場合の給与計算はどうなる?
月の途中で育児休業(育休)を開始する場合、その月の給与が育休手当の計算にどう影響するかを理解することが重要です。
- 月途中で育休開始した月の扱い
- 月途中で育休を開始したときの具体的な計算例
月途中で育休開始した月の扱い
月の途中で育休を開始した場合でも、基本的な考え方は一緒です。
育休を開始した月の賃金支払基礎日数が11日以上あれば計算対象、11日未満なら除外されます。
例えば、10月15日に育休を開始した場合、10月1日~14日の14日間が賃金支払基礎日数となり、11日以上なので計算対象に。
10月10日に育休を開始した場合では、賃金支払基礎日数が9日です。そのため、10月は賃金支払基礎日数の計算から除外されます。
月途中で育休開始しても、計算対象月の選び方は同じです。育休開始日の前日から遡って賃金支払基礎日数が11日以上ある月を6か月分選びます。
月途中で育休を開始したときの具体的な計算例
月途中で育休を開始する場合の具体的な計算例を示します。
育休開始日から遡って、賃金支払基礎日数11日以上の月を6か月分選び、その総額を180日で割るという手順は変わりません。
【ケース1】
2025年10月15日に育休開始、10月の賃金支払基礎日数14日の場合
- 計算対象月:10月(14日)、9月、8月、7月、6月、5月の6か月
- 6か月の賃金総額:2,880,000円
- 休業開始時賃金日額:2,880,000円÷180日=16,000円
【ケース2】
2025年10月10日に育休開始、10月の賃金支払基礎日数9日(就業時間70時間)の場合
- 計算対象月:9月、8月、7月、6月、5月、4月の6か月(10月を除外して前の月を遡る)
- 6か月の賃金総額:2,850,000円
- 休業開始時賃金日額:2,850,000円÷180日=15,833円
2人目の育休手当はどう計算される?
2人目の育休手当の計算方法についていろいろなパターンに分けました。
1人目の育休から復帰していない場合、時短勤務で復帰した場合、産休直後に育休に入る場合など、複数のパターンで解説します。
2人目の育休で給付額が減るケースと減らないケースも明確にしました。
- 1人目の育休から復帰していない場合
- 時短勤務で復帰した場合の計算方法
- 産休直後に育休に入る場合の注意点
1人目の育休から復帰していない場合
1人目の育休中に2人目を妊娠・出産し、育休から復帰していない場合、2人目の育休手当の計算は1人目と同じ給与を基準に行われます。
つまり、1人目の育休開始前6か月の給与がそのまま2人目の計算にも使われます。
育児休業給付金の計算は「育休開始前6か月の給与」が基準。
育休中は賃金支払基礎日数が11日以上の月がないため、2人目の育休開始日から遡って計算対象月を探すと、1人目の育休開始前のフルタイム時代の給与まで遡ることになります。
結果として、1人目の育休手当の計算に使われたフルタイム勤務時の賃金総額が、そのまま2人目の育休手当の計算にも適用されます。
時短勤務で復帰した場合の計算方法
1人目の育休から時短勤務で復帰し、その後2人目の育休に入る場合です。
時短勤務期間の給与が計算基準となり、給付額は減ります。時短勤務の期間が6か月以上あれば、その6か月の給与が計算対象になります。
| 項目 | フルタイム時(1人目基準) | 時短勤務時(2人目基準) | 差額 |
| 月給の例 | 30万円 | 20万円 | -10万円 |
| 1か月給付額(67%支給) | 約201,000円 | 約134,000円 | 約67,000円の減少 |
フルタイム時と時短勤務で給与に10万円の差があると、給付額にも大きく差がでます。
給付額への影響を最小限にするには、時短勤務期間が6か月未満のうちに2人目の産休・育休に入るよう計画することも一つの選択肢。
6か月未満であれば、フルタイム勤務期間の給与が計算に含まれる可能性があるためです。
産休直後に育休に入る場合の注意点
2人目の産休直後に育休に入る場合は、産休前の働き方によって給付額が維持されるか決まります。
2人目の産前・産後休業(産休)期間は、労働基準法に基づく休業です。給与が支払われないため、賃金支払基礎日数が11日以上の月に該当しません。
計算対象月は産休に入る前の給与が計算基準になります。
産休前にフルタイム勤務をしていれば、給付額は維持されます。一方、産休前に時短勤務をしていれば、その時短勤務時の低い給与が計算基準となり、給付額は減少します。
残業代・賞与・時短勤務は計算に含まれる?
育児休業給付金(育休手当)の計算基準となる「賃金」は、原則として労働の対価として毎月支払われるものを指します。
- 計算に含まれる賃金
- 計算から除外される賃金
計算に含まれる賃金
育休手当の計算対象となる賃金には、基本給のほか、毎月の変動分や手当もすべて含まれます。
つまり、残業代が多い月があれば、その分だけ休業開始時賃金日額が高くなり、給付額も増えます。
- 基本給
- 残業代(時間外手当、深夜手当、休日手当)
- 交通費(通勤手当)
- 各種手当(住宅手当、家族手当、役職手当、資格手当など)
育児休業給付金の計算対象となる「賃金」とは、雇用保険法第4条第4項に定める「賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの」です。
具体的には、基本給、残業代(時間外手当、深夜手当、休日手当)、交通費(通勤手当)、各種手当(住宅手当、家族手当、役職手当、資格手当など)が含まれます。
これらはすべて「労働の対償」として支払われるものです。そのため計算対象に含まれます。
例えば、基本給25万円+残業代5万円+通勤手当2万円=月32万円の場合、32万円がそのまま計算対象となります。
計算から除外される賃金
賞与(ボーナス)、一時金、退職金は、育休手当の計算から除外されます。
これらは「労働の対償」ではあるものの、臨時的・不定期な性質を持つため、毎月の給与とは別扱いとなります。
- 賞与(ボーナス)
- 一時金
- 退職金
雇用保険法施行規則第101条の11において、「3か月を超える期間ごとに支払われる賃金」は計算対象から除外されると規定されています。
賞与(ボーナス)は通常、年2回(夏・冬)または年1回支給です。「3か月を超える期間ごとに支払われる賃金」に該当するので除外されます。
また、退職金や一時金も同様に除外されます。これは、育児休業給付金が「通常の給与水準」を基準に計算されるべきものだから。
臨時的・不定期な賞与を含めると給付額が大きく変動してしまうので、計算からは除外されます。
育休手当の計算シミュレーションと計算ツール
育児休業給付金の計算シミュレーションを、最新の上限額(2025年8月1日改定:日額 16,110円)を適用して提示します。
自分に合った計算例でシミュレーションしてみてください。
- 具体的な計算例(ケース別シミュレーション)
- 無料の計算ツール紹介
具体的な計算例(ケース別シミュレーション)
育休手当の月額は、「休業開始時賃金日額 × 30日 × 支給率」で算出します。
【ケース1】
フルタイム勤務、残業なし、月給30万円
- 育休開始前6か月の賃金総額:30万円×6か月=180万円
- 休業開始時賃金日額:180万円÷180日=10,000円
- 育休開始~180日目:10,000円×30日×67%=201,000円/月
- 181日目以降:10,000円×30日×50%=150,000円/月
【ケース2】
フルタイム勤務、残業代あり、月給30万円+残業代平均5万円
- 育休開始前6か月の賃金総額:35万円×6か月=210万円
- 休業開始時賃金日額:210万円÷180日=11,667円
- 育休開始~180日目:11,667円×30日×67%=234,668円/月
- 181日目以降:11,667円×30日×50%=175,005円/月
【ケース3】
時短勤務(1日6時間)、月給20万円
- 育休開始前6か月の賃金総額:20万円×6か月=120万円
- 休業開始時賃金日額:120万円÷180日=6,667円
- 育休開始~180日目:6,667円×30日×67%=134,000円/月
- 181日目以降:6,667円×30日×50%=100,005円/月
【ケース4】
高収入、月給50万円(上限額を超える)
- 育休開始前6か月の賃金総額:50万円×6か月=300万円
- 休業開始時賃金日額:300万円÷180日=16,667円→上限額16,110円(2025年8月1日時点)
- 育休開始~180日目:16,110円×30日×67%=323,811円/月
- 181日目以降:16,110円×30日×50%=241,650円/月
ケース別給付額一覧(2025年10月現在)
| ケース | 月給 | 休業開始時賃金日額 | 給付額(~180日目/月) | 給付額(181日目~/月) |
| フルタイム(残業なし) | 30万円 | 10,000円 | 201,000円 | 150,000円 |
| フルタイム(残業あり) | 35万円 | 11,667円 | 234,668円 | 175,005円 |
| 時短勤務 | 20万円 | 6,667円 | 134,000円 | 100,005円 |
| 高収入(上限適用) | 50万円 | 16,110円 | 323,811円 | 241,650円 |
無料の計算ツール紹介
育児休業給付金(育休手当)の給付額は、インターネット上の無料計算ツールで概算できます。
ツールは賃金総額や育休期間を入力するだけで、支給額の目安を素早く確認可能です。簡単にだいたいの給付額を確認できるのでとても便利です。
ただし、実際の給付額はハローワークが正式に計算します。正確な給付額を知りたい場合は、ハローワークや会社の人事部門に相談するのがおすすめです。
- 計算ツールの結果はあくまで概算
- 実際の給付額はハローワークが正式に計算
- 11日未満の月の除外などの細かい条件は反映されない場合がある
- 正確な給付額を知りたい場合は、ハローワークや会社の人事部門に相談
2025年4月新設!手取り10割制度(育児休業等給付)
手取り10割制度は、「出生後休業支援給付金」のこと。
出生後休業支援給付金は、2025年4月1日より既に施行されている新しい雇用保険の給付制度です。
これは従来の育児休業給付金とは別の仕組みで、子の出生直後の休業を経済的に強力に支援することを目的としています。
この制度を利用すると、給付金(80%)と社会保険料免除により、休業前の実質的な手取り額の約10割に相当する支援が受けられます。
- 制度の概要
- 育児休業給付金との比較
制度の概要
「出生後休業支援給付金」は、子の出生後8週間以内に28日間(最大4週間×2回)取得できる「産後パパ育休(出生時育休)」を取得した労働者を主な対象としています。
この給付金は、通常の出生時育児休業給付金(67%)に、追加で13%を上乗せ支給するものです。
67%(従来の給付金) + 13%(追加給付) = 合計80%の給付率
この合計80%の給付と社会保険料の免除(本人・会社負担分)を合わせることで、実質的に手取り10割相当の支援となります。
ただし、対象期間は子の出生後8週間以内の「産後パパ育休」期間に限定されます。通常の育児休業の全期間ではない点に注意が必要です。
育児休業給付金との比較
通常の育休手当と出生後休業支援給付金の違いを比較しました。
育児休業給付金と出生後休業支援給付金の比較(2025年10月現在)
| 項目 | 育児休業給付金 | 出生後休業支援給付金 |
| 対象期間 | 子が1歳(最長2歳)まで | 子の出生後8週間以内 |
| 対象者 | 育休取得者全員 | 産後パパ育休取得者(主に父親) |
| 給付率 | 67%(~180日目)/50%(181日目~) | 67%+13%=80% |
| 計算基準 | 休業開始時賃金日額 | 休業開始時賃金日額(同じ) |
| 支給要件 | 育休取得 | 夫婦両方が14日以上の育休取得 |
出生後休業支援給付金の支給の要件は2つです。
- 出生時育児休業等の休業日数が通算14日以上あること
- 原則として配偶者も14日以上の休業を取得していること
育休手当とは異なる点も多いのでしっかり確認してから利用しましょう。
よくある質問(Q&A)

社会保険労務士法人 牧江&パートナーズ
会長 牧江 重徳(まきえ しげのり)
【資格】
特定社会保険労務士
行政書士
社会福祉士・介護福祉士・ケアマネージャー
関西大学卒業後、約10年間の会社勤務を経て、昭和52年8月、社会保険労務士として独立しました。
同年10月には行政書士事務所を併設。平成31年には事務所を法人化しました。
「常にお客様と共にあり」をモットーとして、多くのお客様からご愛顧を賜り、創業50周年を迎えます。
現在、職員60人を擁する西日本有数の社会保険労務士法人に成長しました。




