60歳以上の社会保険はどうなる?加入義務や扶養・厚生年金の判断基準

makieoffice社労士コラム

60歳以上の社会保険はどうなる?加入義務や扶養・厚生年金の判断基準

60歳を過ぎても働き続ける人が増えています。

しかし、社会保険に対して「定年後も加入する必要があるのか?」「扶養に入れるのか?」
「厚生年金の加入にメリットはあるのか?」など疑問を持つ方は多いでしょう。

結論から言うと、60歳以上でも社会保険の加入義務は生じます。
厚生年金は70歳未満、健康保険は75歳未満が対象で、年齢による免除はありません。

本記事では、2026年3月時点の最新情報をもとに、60歳以上の社会保険加入義務について解説します。
厚生年金のメリットデメリットや保険料の計算方法まで網羅しているので、ぜひ参考にしてくださいね。

この記事で分かること
  • 60歳以上でも社会保険の加入義務がある条件
  • 60歳以上の「社会保険の壁」と扶養の判断基準
  • 厚生年金に加入するメリット・デメリット
  • 社会保険料の計算方法と年収別の早見表
  • 社会保険に加入したくない場合の対処法

Table of Contents

    「60歳以上は社会保険に入らなくていい」と考える方は少なくありません。
    しかし、それは誤解です。

    60歳以上でも社会保険の加入義務はあり、厚生年金は70歳未満、健康保険は75歳未満が加入対象となります。
    正社員はもちろん、一定の条件を満たすパート・アルバイトも加入義務があります。

    正社員・嘱託社員は原則加入義務あり

    60歳以上であっても、正社員・嘱託社員の場合は社会保険(健康保険・厚生年金)に加入しなければなりません。
    厚生年金保険法第9条と健康保険法第3条では、社会保険の加入対象年齢を以下のように定めています。

    社会保険の加入対象年齢

    • 厚生年金保険:70歳未満が加入対象
    • 健康保険:75歳未満が加入対象(75歳以上は後期高齢者医療制度に移行)

    つまり、60歳という年齢は法律上の加入義務免除要件に該当しないのです。
    定年退職後に嘱託社員として再雇用される場合も、条件を満たせば社会保険に加入する必要があります。
    具体的には、週の所定労働時間がフルタイム社員の4分の3以上であることが要件です。

    パート・アルバイトは条件を満たせば加入義務あり

    パート・アルバイトであっても、以下の条件をすべて満たす場合は社会保険に加入義務が生じます。
    年齢に関係なく、条件を満たせば60歳以上でも加入が必要です。

    パート・アルバイトの社会保険加入条件(2024年10月以降)

    • 週の所定労働時間が20時間以上
    • 月額賃金が8.8万円以上(年収約106万円以上)
    • 2ヶ月を超える雇用見込みがある
    • 学生でない
    • 従業員51人以上の企業で働いている

    上記の条件を満たさない場合も、週の所定労働時間がフルタイム社員の4分の3以上であれば社会保険に加入する必要があります。

    企業規模要件の廃止で多くのパートが加入対象へ

    2024年10月からは、従業員51人以上の企業で働くパートも社会保険の対象となりました。
    これは2016年から段階的に進められてきた適用拡大の一環です。

    施行時期 対象となる企業規模
    2016年10月 従業員501人以上
    2022年10月 従業員101人以上
    2024年10月 従業員51人以上
    2027年10月以降 段階的に縮小し、2035年までに撤廃

    約50万人の短時間労働者が新たに社会保険の加入対象になり、60歳以上のパート勤務者にも大きな影響があります。
    今後も段階的に適用拡大が予定されているため、将来的にはほぼすべての企業で働くパートが社会保険の対象になる見込みです。

    60歳以上の社会保険における「壁」と扶養の判断基準

    社会保険の収入基準は、「106万円の壁」と「130万円の壁」の2つ。

    また、60歳以上の場合は「扶養の年収基準が130万円から180万円に緩和される」特有のルールがあります。
    これを知らないと損をする可能性があるので、ここで内容を確認しておきましょう。

    106万円の壁と130万円の壁の違い

    106万円の壁と130万円の壁は、どちらも社会保険に関する収入基準ですが、その意味は異なります。
    壁の種類 意味 条件
    106万円の壁 自分自身が勤務先の社会保険に加入するライン 月収8.8万円以上+週20時間以上+従業員51人以上の企業
    130万円の壁 配偶者の扶養から外れるライン(60歳未満の場合) 年収130万円以上で被扶養者から外れる
    180万円の壁 配偶者の扶養から外れるライン(60歳以上の場合) 年収180万円以上で被扶養者から外れる

    106万円を超えると勤務先で自分自身が社会保険に加入し保険料を負担することになります。
    一方、130万円(60歳以上は180万円)を超えると配偶者の扶養から外れ、自分で国民健康保険などに加入する必要があります。

    60歳以上で配偶者の扶養に入れる条件

    60歳以上の場合、年収180万円未満(月額15万円未満)であれば配偶者の健康保険の被扶養者になれます。
    60歳未満の130万円未満と比べて50万円も基準が緩和されており、60歳以上は扶養内で働ける範囲が広がる仕組みです。

    60歳以上の被扶養者認定基準

    • 年収180万円未満(月額15万円未満)であること
    • 同居の場合:被保険者の年収の2分の1未満であること
    • 別居の場合:被保険者からの援助額より収入が少ないこと

    ただし、前述の「106万円の壁」の条件を満たす場合は、年収が180万円未満でも社会保険に加入しなければなりません。
    扶養に入るか自分で加入するかは、勤務先の規模や労働時間によって決まります。

    扶養を外れて社会保険に加入すべきケース

    以下のような場合は、扶養を外れて自分で社会保険に加入するメリットがあります。

    扶養を外れて社会保険に加入するメリット

    • 将来の老齢厚生年金が増える(終身で受け取れる)
    • 傷病手当金を受けられる(病気やケガで働けない時の給付)
    • 障害厚生年金・遺族厚生年金の対象になる
    • 保険料の半分を会社が負担してくれる
    • 扶養の収入制限を気にせず働けるため、収入増加につながる

    特に60歳以降も長く働く予定がある人は将来の年金を増やせるため、加入を検討しても良いでしょう。

    60歳以上が厚生年金に加入するメリットとデメリット

    60歳以上で厚生年金に加入すると、将来の年金が増えるメリットがあります。
    しかし、保険料負担による手取り減少や在職老齢年金による年金カットのデメリットが存在する点も理解しておきましょう。

    ここからは、メリット・デメリットの両面を具体的な数字とともに解説します。

    厚生年金加入のメリット|老齢年金が増える

    60歳以降も厚生年金に加入すれば、老齢厚生年金の受給額を増やすことが可能です。
    厚生年金は加入期間と報酬に応じて受給額が決まるため、60歳以降も働いて加入期間を延ばせば年金が増えます。

    厚生年金に加入するメリット

    • 老齢厚生年金の受給額が増える(終身で受け取れる)
    • 障害厚生年金・遺族厚生年金の対象になる
    • 健康保険にも同時に加入するため、傷病手当金を受けられる
    • 保険料の半分を会社が負担してくれる(労使折半)

    特に保険料の半分を会社が負担してくれる点は大きなメリットです。
    自営業者が払う国民年金・国民健康保険と比べて、効率よく年金を増やすことができます。

    厚生年金加入のデメリット|保険料負担と手取り減少

    厚生年金に加入すると毎月の保険料負担により手取り収入が減少します。
    厚生年金保険料は報酬の約18.3%(本人負担は約9.15%)。
    健康保険料と合わせると報酬の約15%程度が天引きされます。

    厚生年金に加入するデメリット

    • 毎月の保険料負担で手取り収入が減少する
    • 65歳以上は在職老齢年金の対象になり、年金がカットされる可能性がある

    65歳以上で働きながら年金を受給する場合、賃金と年金の合計が一定額を超えると「在職老齢年金」により年金が減額されます。

    ただし、年金制度改正により2026年4月から支給停止基準額が50万円から65万円に引き上げられることが決定しました。
    これにより年金が減額されにくくなります。

    60歳から5年間加入した場合の年金増加シミュレーション

    老齢厚生年金の計算式は「平均標準報酬額×5.481/1000×加入月数」です。
    この計算式を使って、60歳から5年間(60ヶ月)厚生年金に加入した場合の年金増加額を試算します。

    月収(標準報酬月額) 年金増加額(年間) 年金増加額(月額)
    10万円 約3.3万円 約2,700円
    15万円 約4.9万円 約4,100円
    20万円 約6.6万円 約5,500円
    25万円 約8.2万円 約6,900円
    30万円 約9.9万円 約8,200円

    月収20万円で5年間加入した場合、老齢厚生年金は年間約6.6万円(月約5,500円)増えます。
    この年金は終身で受け取れるため、長生きするほど元が取れる仕組みです。

    60歳以上の社会保険料の計算方法と年収別早見表

    社会保険料は「標準報酬月額×保険料率」で計算されます。
    厚生年金保険料率は全国一律18.3%(本人負担9.15%)。
    健康保険料率は都道府県により異なりますが約10%前後(本人負担約5%)です。

    具体的な年収別の保険料目安を早見表で示します。

    社会保険料の計算式

    社会保険料は「標準報酬月額×保険料率」で計算されます。
    標準報酬月額とは、毎月の給与を一定の幅で区分した等級に当てはめた金額です。

    社会保険料率(2026年1月現在)

    • 厚生年金保険料率:18.3%(本人負担9.15%)※2017年9月以降固定
    • 健康保険料率:都道府県により約9.5%~10.5%(本人負担は半分)
    • 介護保険料率:約1.6%(40歳以上65歳未満が対象、本人負担は半分)

    保険料は労使折半のため、実際に給与から天引きされるのは上記の半分です。
    健康保険料率は協会けんぽの場合、都道府県ごとに異なります(例:東京都9.91%、大阪府10.24%)。

    年収別の社会保険料早見表

    年収別の社会保険料(本人負担額)の目安は以下の通りです。
    年収 月収 厚生年金(本人負担/年) 健康保険(本人負担/年) 合計(年間)
    106万円 約8.8万円 約9.7万円 約5.3万円 約15万円
    130万円 約10.8万円 約11.9万円 約6.4万円 約18.3万円
    150万円 約12.5万円 約13.7万円 約7.4万円 約21.1万円
    180万円 約15万円 約16.5万円 約8.9万円 約25.4万円
    200万円 約16.7万円 約18.3万円 約9.9万円 約28.2万円
    ※健康保険料率は東京都(9.91%)で試算。40歳以上65歳未満は介護保険料(約1.6%)が加算されます。

    国民年金・国民健康保険との保険料比較

    厚生年金に加入すると自動的に国民年金の第2号被保険者となり、国民年金保険料を別途支払う必要はありません。
    国民年金保険料は定額(2025年度は月額17,510円)ですが、厚生年金保険料には国民年金分も含まれています。

    項目 厚生年金・健康保険 国民年金・国民健康保険
    保険料負担 労使折半(会社が半分負担) 全額自己負担
    将来の年金 報酬に応じて増える(老齢厚生年金が上乗せ) 定額(老齢基礎年金のみ)
    傷病手当金 あり なし(一部自治体を除く)
    出産手当金 あり なし
    厚生年金は会社が半分負担してくれるため、自営業者が払う国民年金・国民健康保険より効率が良いと言えます。

    60歳以上で社会保険に加入したくない場合の対処法と注意点

    社会保険への加入を避けたい場合は、加入要件を満たさないように働き方を調整しましょう。
    ただし、加入を避けることにはリスクやデメリットもあるため、慎重な判断が必要です。

    社会保険に加入しない働き方の調整方法

    社会保険に加入したくない場合は、以下の方法で加入要件を満たさないように調整できます。

    社会保険に加入しないための条件

    • 週の所定労働時間を20時間未満に抑える
    • 月額賃金を8.8万円未満に抑える
    • 従業員50人以下の企業で働く(2024年10月時点)

    ただし、2025年から企業規模要件は段階的に縮小されています。
    2035年には撤廃されることが決まっているため、将来的に加入は避けられない可能性が高いことを理解しておきましょう。

    社会保険に加入しないことのリスクとデメリット

    社会保険に加入しないことで短期的な手取りは増えますが、以下のデメリットがあります。

    社会保険に加入しないデメリット

    • 将来の老齢厚生年金が増えない
    • 病気やケガで働けない時の傷病手当金が受けられない
    • 障害厚生年金・遺族厚生年金の対象外となる
    • 扶養に入れない場合は国民健康保険料を全額自己負担

    特に傷病手当金は、病気やケガで働けなくなった時に給与の約3分の2が最長1年6ヶ月支給される制度です。
    国民健康保険には原則としてこの制度がないため、万が一の保障が薄くなります。

    短期的な手取りを優先するか、長期的な保障を優先するか。
    自分のライフプランに合わせて判断することが大切です。

    60歳以上の社会保険加入義務に関するよくある質問12選

    60歳以上の社会保険加入について、よくある質問をまとめました。
    当サイトの管理者
    牧江重徳

    社会保険労務士法人 牧江&パートナーズ
    会長 牧江 重徳(まきえ しげのり)

    【資格】
    特定社会保険労務士
    行政書士
    社会福祉士・介護福祉士・ケアマネージャー

    関西大学卒業後、約10年間の会社勤務を経て、昭和52年8月、社会保険労務士として独立しました。
    同年10月には行政書士事務所を併設。平成31年には事務所を法人化しました。

    「常にお客様と共にあり」をモットーとして、多くのお客様からご愛顧を賜り、創業50周年を迎えます。
    現在、職員60人を擁する西日本有数の社会保険労務士法人に成長しました。

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