
「社則」という言葉を聞いても、具体的に何を指すのかわからない人も多いのではないでしょうか?
就業規則との違いも、意外と知られていません。
本記事では、社則の意味や読み方をはじめ、就業規則との違い、記載内容、閲覧・コピーの権利まで幅広く解説します。
社則がない場合の対処法についても、2026年3月時点の最新情報をもとにわかりやすくまとめました。
「従業員として自分の権利を知りたい」「経営者として就業規則を整備したい」のような方は、ぜひ参考にしてください。
- 社則と就業規則の違いと、それぞれの法的位置づけ
- 就業規則に記載される主な内容(絶対的・相対的・任意記載事項)
- 就業規則の閲覧方法・コピーの可否と、閲覧できない場合の対処法
- 就業規則がない場合のリスクと対処法
- 就業規則の作り方とテンプレート活用法
Table of Contents
「社則」と「就業規則」は似たような意味で使われることがありますが、法的な位置づけが大きく異なります。
社則の意味・読み方や就業規則との違い、誰が作成するのかまでを解説します。
社則の意味と読み方
社則は「しゃそく」と読みます。
会社内のルールや規律を定めたものの総称です。
ただし、社則は法律で定義された用語ではありません。
労働基準法には「社則」という言葉は登場せず、法律上の正式な用語は「就業規則」です。
社則は、就業規則や社内規程、服務規律などを含む広い意味で使われる俗称。
会社によっては「社内規定」「社内ルール」「会社規則」などと呼ばれることもあります。
- 就業規則(労働条件や服務規律を定めた規則)
- 給与規程(賃金の計算・支払方法を定めた規程)
- 退職金規程(退職手当の支給基準を定めた規程)
- 旅費規程(出張旅費の支給基準を定めた規程)
- 育児・介護休業規程
社則と就業規則の違い
社則と就業規則の最大の違いは、法的な定義と義務の有無です。
社則は会社ルールの総称であり、法的な定義はありません。
一方、就業規則は労働基準法第89条で定められた法的文書です。
常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則の作成と労働基準監督署への届出が義務付けられています。
この義務に違反した場合は、30万円以下の罰金が科される可能性があります。
| 項目 | 社則 | 就業規則 |
| 法的定義 | なし(俗称) | 労働基準法第89条で定義 |
| 作成義務 | なし | 10人以上の事業場で義務 |
| 届出義務 | なし | 労働基準監督署への届出が必要 |
| 記載事項 | 自由 | 絶対的必要記載事項あり |
| 罰則 | なし | 違反時30万円以下の罰金 |
つまり、「社則」は会社のルール全般を指す一般的な呼び名。
「就業規則」はその中でも法律で作成・届出が義務付けられた公式な文書ということになります。
社則・就業規則は誰が作るのか
就業規則は使用者(会社側)が作成します。
ただし、使用者が内容を自由に決められるわけではありません。
就業規則を作成・変更する際には、労働者の過半数代表者から意見を聴くことが義務付けられています。(労働基準法第90条)
具体的には、事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合。
ない場合は労働者の過半数を代表する者の意見を聴く必要があります。
- 意見を「聴く」ことが義務であり、「同意を得る」ことは義務ではない
- 労働者代表が反対意見を述べても、届出は可能
- 意見書を添付して労働基準監督署に届け出る
なお、就業規則の作成を社会保険労務士(社労士)や弁護士に依頼する企業も多くあります。
専門家に依頼することで、法令に準拠した適切な就業規則を作成できます。
社則・就業規則に記載される主な内容3つ
就業規則に記載すべき項目は、労働基準法で以下の3つに分類されています。
- 絶対的必要記載事項
- 相対的必要記載事項
- 任意記載事項
それぞれの内容を理解し、自社の就業規則を確認して労働条件を正しく把握しましょう。
絶対的必要記載事項(必ず記載が必要な項目)
絶対的必要記載事項とは、就業規則に必ず記載しなければならない項目のことです。
労働基準法第89条第1号〜第3号で定められており、この記載がない場合、労働基準法第89条違反となります。
労働基準監督署への届出時にも、記載漏れがあると補正指導が行われる場合があります。
| 区分 | 記載事項 |
| 労働時間関係 | 始業・終業時刻、休憩時間、休日、休暇、交替制の場合の就業時転換に関する事項 |
| 賃金関係 | 賃金の決定・計算・支払方法、賃金の締切・支払時期、昇給に関する事項 |
| 退職関係 | 退職に関する事項(解雇の事由を含む) |
これらは労働条件の根幹をなす事項であり、労働者にとって最も重要な情報です。
就業規則を確認する際は、まずこれらの項目が明記されているかをチェックしましょう。
相対的必要記載事項(定めがある場合に記載が必要な項目)
相対的必要記載事項とは、会社に制度がある場合に記載が必要な項目のことです。
制度を設けていない場合は記載不要ですが、制度がある場合は必ず就業規則に定めなければなりません。
- 退職手当に関する事項(適用範囲、計算方法、支払時期など)
- 臨時の賃金・賞与、最低賃金額に関する事項
- 食費、作業用品などの負担に関する事項
- 安全衛生に関する事項
- 職業訓練に関する事項
- 災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
- 表彰・制裁(懲戒)に関する事項
- その他、全労働者に適用される事項
特に注意が必要なのは表彰・制裁(懲戒)に関する事項です。
懲戒処分を行う場合は、就業規則に制裁の種類・程度を定めておく必要があります。
就業規則に定めのない懲戒処分は、原則として無効となります。
任意記載事項(会社が自由に定められる項目)
任意記載事項とは、法律で義務付けられていないが、会社が自由に定めることができる項目のことです。
公序良俗に反しない限り、会社の実情に合わせて規定できます。
近年は働き方の多様化に伴い、さまざまな規定を設ける企業が増えています。
- 服務規律(職場のマナー、秘密保持義務など)
- 副業・兼業に関する規定
- SNS利用に関する規定
- ハラスメント防止に関する規定
- テレワーク(在宅勤務)に関する規定
- 勤務間インターバル制度に関する規定
- 不妊治療休暇に関する規定
厚生労働省のモデル就業規則(令和7年12月版)では、副業・兼業について届出制の規定例が示されています。
一般的な許可制とは異なるため、テンプレートをそのまま使用する際は注意が必要です。
社則・就業規則の閲覧方法と確認できる場所
従業員には就業規則を閲覧する権利があります。
会社には労働基準法で「周知義務」が課されているためです。
ここからは、就業規則の確認方法、コピーの可否、閲覧できない場合の対処法を解説します。
就業規則はどこで見れる?確認できる場所
就業規則は、労働基準法第106条により労働者に周知することが義務付けられています。
周知方法を定めているのは、労働基準法施行規則第52条の2です。
- 常時各作業場の見やすい場所に掲示し、または備え付ける
- 書面を労働者に交付する
- 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、各作業場に労働者がその記録の内容を常時確認できる機器を設置する(社内イントラネット等)
電子データでの周知も認められていますが、以下の条件を満たす場合に限られます。
- 従業員が自ら電子機器を操作して就業規則のデータを引き出せる権限が与えられていること
- 閲覧方法が周知されていること
就業規則の場所がわからない場合は、まず総務部や人事部に確認してみてください。
周知義務があるため、会社は必ずいずれかの方法で従業員が閲覧できるようにしているはずです。
就業規則の閲覧・コピーは可能?
結論から言うと、閲覧は認められますが、コピーは会社の裁量に委ねられています。
閲覧については、周知義務があるため従業員の当然の権利です。
一方、コピーや持ち帰りについては、法律上の義務はありません。
東京地方裁判所の判決(平成30年11月2日・学校法人文際学園事件)では、以下のように判断されています。
「労働者が使用者に対して就業規則の謄写を請求する権利を規定した法令上の根拠はなく、就業規則の謄写自体の可否及びその方法については、基本的に使用者の裁量に委ねられている」
引用元:新潟企業のための法律・経営相談
- 会社が就業規則を社外秘扱いとし、持ち出し禁止とすることは適法
- 無断でコピーした場合、懲戒処分の対象となる可能性がある
- ただし、労働基準監督署や弁護士への相談のために持ち出した場合は、懲戒処分は認められにくい
就業規則が閲覧できない場合の対処法
会社が就業規則を見せてくれない場合は、以下の手順で対処しましょう。
まず、会社に対して周知義務違反であることを伝え、閲覧を求めます。
労働基準法第106条で周知が義務付けられていることを説明し、正式に閲覧を依頼してください。
それでも拒否される場合は、労働基準監督署に相談することが有効です。
周知義務違反は労働基準法違反であり、30万円以下の罰金の対象となります(第120条)。
労働基準監督署は会社に対して指導・是正勧告を行う権限を持っています。
- まず会社(総務部・人事部)に正式に閲覧を依頼する
- 周知義務があることを伝え、閲覧方法を確認する
- 拒否される場合は、労働基準監督署に相談する
- 労基署では、一定の事情があれば就業規則を確認できる場合がある
なお、就業規則は労働基準監督署に届け出られているものです。
会社が閲覧を拒否した場合でも、労基署に相談すれば確認できる場合があります。
社則・就業規則がない場合のリスクと対処法
「うちの会社には就業規則がない」と言われた場合、どう対処すればよいでしょうか。
就業規則がない場合のリスク、10人未満の会社の扱い、従業員側の対処法を解説します。
就業規則がない会社の法的リスク
常時10人以上の労働者を使用する事業場で就業規則がないのは、労働基準法第89条違反です。
違反した場合は、第120条により30万円以下の罰金が科される可能性があります。
また、就業規則がないと、以下のようなリスクが生じます。
- 労働条件が不明確になり、労使トラブルが発生しやすくなる
- 有給休暇の時季指定や休職制度の運用が困難になる
- 懲戒処分を行う根拠がなくなる
- 助成金を申請できない可能性がある
ただし、有給休暇や退職の権利は労働基準法で保障されており、就業規則がなくても行使可能です。
有給休暇は労働基準法第39条で付与が義務付けられてます。
付与の条件は、6ヵ月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤していることです。
退職は民法第627条により、期間の定めのない雇用契約はいつでも解約申入れが可能。
申し入れから2週間経過すれば退職できます。
10人未満の会社と就業規則の作成義務
常時10人未満の事業場には、就業規則の作成・届出義務はありません。
労働基準法第89条は「常時10人以上の労働者を使用する使用者」に作成義務を課しています。
10人未満は対象外です。
「常時10人」には、正社員だけでなく、パートタイマーやアルバイトも含まれます。
ただし、10人未満でも就業規則を作成することには以下のメリットがあります。
- 労働条件が明確になり、労使トラブルを防止できる
- 従業員が安心して働ける環境を整備できる
- 厚生労働省の助成金(キャリアアップ助成金等)を申請できる
- 作成した就業規則は10人未満でも法的効力を持つ
就業規則がないと言われたらどうする?
会社から「就業規則がない」と言われた場合は、まず会社の従業員数を確認しましょう。
常時10人以上の労働者がいる場合は、労働基準法第89条違反の可能性があります。
この場合は労働基準監督署に相談することをおすすめします。
10人未満の場合は作成義務がないため、就業規則がなくても違法ではありません。
ただし、労働基準法第15条により、使用者は労働契約締結時に労働条件を書面で明示する義務があります。
- 「労働条件通知書」を受け取っているか確認する
- 労働時間、賃金、休日などの基本的な労働条件が書面で明示されているか確認する
- 不明な点は会社に確認し、書面で回答をもらう
- 問題がある場合は労働基準監督署や労働相談窓口に相談する
2024年4月の法改正により、労働条件通知書の明示事項が拡充されています。
就業場所・業務の変更の範囲なども明示が必要になりました。
社則・就業規則の作り方とテンプレート活用法
「就業規則を作りたいけど、どうすればいいかわからない」という人もいるでしょう。
ここからは、就業規則の作成方法、厚生労働省のモデル就業規則、テンプレートの入手方法と注意点を解説します。
経営者や人事担当の方は、ぜひ活用してみてくださいね。
就業規則は自分で作れる?作成の流れ4ステップ
結論から言うと、就業規則は自分で作成可能です。
作成に資格は必要ありません。
ただし、内容は労働基準法等に沿って作成することが求められます。
社会保険労務士や弁護士などの専門家に相談すると、安心して進めることができるでしょう。
就業規則の作成から届出までの流れは以下の4ステップです。
- ステップ1:原案の作成(厚生労働省のモデル就業規則等を参考に作成)
- ステップ2:労働者代表への意見聴取(意見書の作成)
- ステップ3:労働基準監督署への届出(就業規則・意見書・届出書を提出)
- ステップ4:労働者への周知(掲示・備え付け・書面交付・イントラネット等)
e-Gov電子申請を使えば、労働基準監督署に行かずにオンラインで届出ができます。
また、就業規則の内容が事業場ごとに変わらない場合は「本社一括届出制度」も利用可能です。
厚生労働省のモデル就業規則とは
厚生労働省は、各事業場が就業規則を作成する際の参考となる「モデル就業規則」を公開しています。
無料でダウンロード可能です。
最新版は令和7年12月改訂版で、法改正に対応した内容となっています。
日本語のほか、英語・中国語・ポルトガル語・ベトナム語にも対応可能です。
- 厚生労働省が作成した公式のひな形
- 法改正に対応して定期的に更新される
- 規程例と解説が記載されている
- 多言語版も提供
また、厚生労働省は「就業規則作成支援ツール」も提供しています。
入力フォームに必要事項を入力・印刷することで、労働基準監督署に届出可能な就業規則を作成できます。
就業規則テンプレートの入手方法と注意点
- 厚生労働省「モデル就業規則」(Word形式でダウンロード可能)
- 厚生労働省「就業規則作成支援ツール」(オンラインで作成可能)
- 各都道府県の労働局(相談窓口でひな形を提供)
- 東京都産業労働局「就業規則作成の手引き」(PDF形式で公開)
ただし、テンプレートをそのまま使用するのは危険です。
以下の点に注意してください。
- モデル就業規則は厚生労働省の政策を反映した規定例であり、自社の実情に合わない場合がある
- 副業・兼業について届出制の規定例が示されているが、一般的な許可制とは異なる
- 自社の実態に合わせたカスタマイズが必要
- 社労士や弁護士にチェックを依頼することで、法的リスクを軽減できる
社則・就業規則に関するよくある質問15選

社会保険労務士法人 牧江&パートナーズ
会長 牧江 重徳(まきえ しげのり)
【資格】
特定社会保険労務士
行政書士
社会福祉士・介護福祉士・ケアマネージャー
関西大学卒業後、約10年間の会社勤務を経て、昭和52年8月、社会保険労務士として独立しました。
同年10月には行政書士事務所を併設。平成31年には事務所を法人化しました。
「常にお客様と共にあり」をモットーとして、多くのお客様からご愛顧を賜り、創業50周年を迎えます。
現在、職員60人を擁する西日本有数の社会保険労務士法人に成長しました。




