労働基準監督署への相談事例10選【2024年データ】
2024年の最新統計によると、全国の労働基準監督署で取り扱った賃金不払い事案は22,354件。
前年から約1,000件増加しました。
総額は172.1億円(前年比+約70億円)対象労働者数は18万5,197人(前年比+3,294人)。
労働問題は依然として深刻な状況にあります。
ここでは、実際の相談事例を、具体的な対処法とともに解説します。
労働基準監督署への相談事例10選
- 有給休暇が取れない・有給申請を拒否される
- 残業代が支払われない・サービス残業
- 長時間労働・過重労働(36協定違反)
- 不当な賃金控除・罰金制度
- 退職時の賃金未払い・退職金未払い
- 同意なく労働条件を変更
- 不当解雇・雇い止め
- 時給が最低賃金より低い
- 労働契約書・就業規則の未交付
- 職場の安全衛生管理の問題
人手不足や繁忙期を理由に有給申請を拒否することは、労働基準法第39条違反に該当します。
労働基準監督署に相談しましょう。
労働基準法第39条
使用者は、次の条件を満たす労働者に年次有給休暇を付与する義務があります。
・6か月以上継続勤務
・全労働日の8割以上出勤している
また、「時季指定権」により有給休暇は労働者が請求した時季に与えなければなりません。
使用者が有給取得を拒否できるのは、事業の正常な運営を妨げる場合のみ(時季変更権)
人手不足や繁忙期は時季変更権の正当な理由にはならず、完全に拒否することはできません。
有給申請を拒否した場合、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金(労働基準法第119条)が科される可能性があります。
(最高裁判例:白石営林署事件)
2019年から年5日の有給取得が義務化
2019年4月から毎年5日、時季を指定して有給休暇を取得させることが義務付けられました。
(労働基準法第39条第7項)
対象となるのは、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者です。
違反した場合、使用者には労働者1人につき30万円以下の罰金が科されます。
残業代の未払いは、労働基準法第37条違反です。
- タイムカード打刻後に働かされる
- 「みなし残業だから残業代はでない」と言われる
などのケースは労働基準監督署への相談対象となります。
労働基準法第37条
法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて労働させた場合、使用者は割増賃金(通常の1.25倍以上)を支払う義務がある。
みなし残業制であっても、みなし時間を超えた残業代は別途支払う必要があります。
タイムカード打刻後の労働や、持ち帰り仕事も含めて全て「労働時間」です。
残業代未払いは、賃金不払い事案の中でも大きな割合を占めており……
違反した場合、使用者には6か月以下の懲役または30万円以下の罰金(労働基準法第119条)が科される可能性があります。
また、賃金請求権の時効は3年(2020年4月改正、従来は2年)です。
月100時間を超える残業、36協定を超える長時間労働は
の違反となり、労働基準監督署に相談できます。
2024年4月からは建設業・運送業・医師の残業規制も強化されました(2024年問題)。
時間外労働は原則として月45時間・年360時間が上限。(36協定)
特別条項を設けても、年720時間以内、複数月平均80時間以内(休日労働含む)、月100時間未満(同)が上限です。
これを超える長時間労働は違法であり、過労死・過労自殺のリスクも高まります。
過労死ラインは、月80時間超の時間外労働です。
参照:厚生労働省「脳・心臓疾患の労災認定基準」
違反した場合、使用者には6か月以下の懲役または30万円以下の罰金(労働基準法第119条)が科されます。
2024年問題とは
2024年4月から、これまで猶予されていた
- 建設業
- 自動車運転業務(トラック・バス・タクシー)
- 医師
にも時間外労働の上限規制が適用されました。
これにより、長時間労働の是正が進む一方で、人手不足の深刻化や経営への影響が懸念されています。
次のような行為は、労働基準法第16条・第24条違反で労働基準監督署に相談できます。
- 遅刻・早退に対して実際の労働時間以上に賃金を控除する
- ミスをしたら罰金を給料から天引きする
労働基準法第16条(賠償予定の禁止)
労働契約の不履行について違約金や損害賠償額を予定することを禁止する。
労働基準法第24条(賃金の支払)
賃金は全額払いが原則であり、法令で定められたもの(税金、社会保険料)や労使協定で定めたもの以外を控除することはできない。
遅刻に対する控除も、実際に労働しなかった時間分に限られます。
(ノーワーク・ノーペイの原則)
例えば、10分遅刻に対して1時間分の賃金控除をすることは違法です。
違反した場合、使用者には「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」(労働基準法第119条・第120条)が科されます。
退職金が就業規則等で定められていると、労働基準法第11条でいう「賃金」に該当します。
退職時に最後の給料や残業代、退職金が支払われない場合……
労働基準法第24条(賃金全額払いの原則)違反であり、労働基準監督署に相談可能です。
特に、退職後の賃金未払いは2024年の相談事例でも多く見られます。
労働基準法第24条
賃金は通貨で直接労働者に、その全額を支払わなければならない。
労働基準法第23条には以下のような記載があります。
”労働者が退職する場合、権利者の請求があれば7日以内に賃金を支払う”
しかし、これは通常の賃金(最後の給料や残業代など)に適用される規定です。
退職金に関しては、あらかじめ就業規則等で定められた支払い時期までに支払えばOK。
7日以内の義務は適用されません。
期限までに支払わない場合、使用者には以下のような罰則が科される可能性があります。
- 30万円以下の罰金(労働基準法第120条)
- 6か月以下の懲役または30万円以下の罰金(労働基準法第119条)
また、賃金請求権には時効があり、通常の賃金請求権の時効は3年ですが、退職金請求権の時効は5年であるため、退職後でも請求が可能です。
以下のような一方的な労働条件変更も、労働基準監督署への相談対象です。
- 労働者の同意なく賃金を減額する
- 労働時間を延長する
- 休日を減らす
労働契約法第8条・第9条および労働基準法第15条違反に該当します。
労働契約法第8条・第9条
労働者及び使用者は、合意により労働契約の内容である労働条件を変更することができる。
使用者は、労働者と合意することなく就業規則を変更し、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。
労働契約法第8条・第9条により、合意の無い労働条件変更は原則認められません。
また、労働基準法第15条では、労働条件を明示する義務があります。
それと異なる条件を一方的に押し付けることは違法です。
就業規則の変更による場合も、変更が合理的かつ労働者に周知されている必要があります。
(労働契約法第10条)
例えば、以下の事項は違法となる可能性が高いです。
- 基本給30万円を25万円に一方的減額
- 完全週休2日制を週休1日制に変更
たとえば以下のケースは、労働基準法第20条違反として労働基準監督署に相談できます。
- 30日前の予告なく即日解雇された
- 解雇予告手当が支払われない
労働基準法第20条
使用者が労働者を解雇する場合、少なくとも30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければならない。
ただし、解雇の有効性(不当解雇かどうか)については労働基準法の範囲外です。これは労働契約法第16条の問題であり、労働基準監督署では判断できません。そのため、総合労働相談コーナーや弁護士への相談が適切と言えるでしょう。
労働契約法第16条
「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当である」と認められない場合の解雇は無効とする。
解雇の有効性は民事上の争いとなり、労働審判や訴訟で争う必要があります。違反した場合、使用者には6か月以下の懲役または30万円以下の罰金(労働基準法第119条)が科されます。
時給が都道府県の最低賃金を下回る場合。
最低賃金法第4条違反として、労働基準監督署に相談できます。
最低賃金法第4条
使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。
最低賃金法第4条は、研修期間中を含むすべての労働者に適用されます。
都道府県別の地域別最低賃金は毎年10月頃に改定され、2024年度の全国加重平均は1,055円となっています。
最高額は東京都1,163円、最低額は岩手県の893円(2024年10月発効)です。
違反した場合、使用者には50万円以下の罰金(最低賃金法第40条)が科されます。
労働契約書を交付されない、就業規則を見せてもらえない場合。
労働基準法第15条・第106条違反として労働基準監督署に相談できます。
労働基準法第15条
使用者は労働契約締結時に、賃金・労働時間・休日などの労働条件を書面で明示しなければならない。
労働基準法第106条
使用者は、就業規則を労働者に周知する義務がある。
これらの義務を怠ることは違法であり、労働者が自分の権利を知ることができない状態になります。
2024年4月から労働条件明示のルールが強化され、有期契約労働者には以下の明示が義務化されました。
- 更新上限の有無
- 無期転換申込機会
- 無期転換後の労働条件
違反した場合、使用者には30万円以下の罰金(労働基準法第120条)が科されます。
職場が次のような環境の場合、労働安全衛生法違反として労働基準監督署に相談できます。
- 危険な機械に安全装置がない
- 換気が悪く有害物質が充満している
- 健康診断を実施してくれない
労働安全衛生法は、労働者の安全と健康を確保するための措置を講じる義務を定めています。
(安全配慮義務)
具体的には、以下を怠ると、労働災害や健康被害につながります。
- 機械設備の安全化(第20条~第25条)
- 危険、健康障害の防止措置(第22条)
- 健康診断の実施(第66条)など
また、労働契約法第5条でも、使用者の安全配慮義務が規定されており、違反した場合、使用者には6か月以下の懲役または50万円以下の罰金など(労働安全衛生法第119条・第120条)が科されます。