歩合制とは?完全歩合制・一部歩合制の違いをわかりやすく解説

makieoffice社労士コラム

歩合制とは

歩合制(ぶあいせい)は、成果に応じて給与が変動する給与形態です。営業職やタクシー運転手など、多くの職種で採用されていますが、「完全歩合制」と「一部歩合制」の違いや、最低賃金との関係を正しく理解している人は意外と少ないのではないでしょうか。

この記事では、歩合制の基本的な仕組みから、完全歩合制と一部歩合制の違い、職種別の具体例、法的な注意点まで、初心者にもわかりやすく図解で解説します。歩合制の求人を検討している方、すでに歩合制で働いている方の疑問を解消します。

この記事でわかること
  • 歩合制の基本的な定義と仕組み
  • 完全歩合制と一部歩合制の違い
  • 職種別の歩合率の相場(営業・タクシー・美容師など)
  • 歩合制のメリット・デメリット
  • 最低賃金・残業代・有給休暇などの法的注意点
  • 雇用形態別(正社員・バイト・業務委託)の違い

Table of Contents

    歩合制とは、従業員の売上や成果に応じて給与が変動する給与形態であり、固定給とは異なり、成果が上がるほど給与も増える仕組みです。

    歩合制は成果主義に基づいた給与体系であり、従業員の努力やスキルが直接給与に反映されるため、モチベーション向上が期待できます。一方で、収入の不安定性や最低賃金との関係など、注意すべき点も多くあります。

    歩合制(ぶあいせい)とは|成果に応じて給与が変動する制度

    歩合制(ぶあいせい)とは、従業員の売上や成果に応じて給与が変動する給与形態であり、固定給とは異なり、成果が上がるほど給与も増える仕組みです。

    歩合制は英語で「commission system」と呼ばれ、販売額や契約数などの具体的な成果に対して一定の割合(歩合率)を掛けて給与を計算します。成果主義に基づいた給与体系であり、従業員の努力やスキルが直接給与に反映されるため、モチベーション向上が期待できます。

    労働基準法では歩合制について「出来高払制その他の請負制」として規定されており(労働基準法第27条)、最低賃金法や労働基準法の適用を受けます。厚生労働省の統計によれば、営業職や販売職を中心に多くの企業で採用されています。

    完全歩合制と一部歩合制(固定給+歩合)の違い

    歩合制には「完全歩合制(固定給なし)」と「一部歩合制(固定給+歩合給)」の2種類があります。

    完全歩合制は基本給がなく、売上や成果に応じた歩合給のみで給与が構成されます。一方、一部歩合制は基本給(固定給)が保証されており、それに加えて成果に応じた歩合給が支給されます。

    完全歩合制は収入の変動が大きい反面、成果次第で高収入を得られる可能性があります。一部歩合制は最低限の収入が保証されるため、生活の安定性が高く、多くの企業で採用されています。

    厚生労働省の調査では、一部歩合制(固定給+歩合)を採用している企業が全体の約70%を占め、完全歩合制は約30%となっています(2024年度調査)。

    歩合制と固定給の違い|どちらが自分に合う?

    固定給は毎月決まった金額が支給される安定型の給与形態で、歩合制は成果に応じて給与が変動する成果型の給与形態であり、安定性を重視するなら固定給、高収入を目指すなら歩合制が向いています。

    固定給は勤務時間や職務内容に応じて決まった給与が支給されるため、収入が安定しており生活設計がしやすいメリットがあります。

    一方、歩合制は成果次第で給与が大きく変動しますが、努力や成果が直接給与に反映されるため、高いモチベーションで働ける人には向いています。自分のライフスタイル、性格、職種、経験によって、どちらが適しているかが変わります。

    歩合制の基本的な仕組み|給与はどう決まる?最低賃金は?

    歩合制の給与は「売上額×歩合率」という明快な計算式で決まりますが、職種によって歩合率は5%〜60%と大きく異なります。一部歩合制の場合は「固定給+歩合給」が総給与となるため、成果がゼロでも最低限の収入が保証されます。

    歩合給の計算方法|基本給×歩合率の仕組み

    歩合給は「売上額(または成果)× 歩合率」で計算され、一部歩合制の場合は「固定給 + 歩合給」が総給与となり、歩合率は通常5%〜60%の範囲で職種や企業によって異なります。

    歩合給の基本的な計算式は「成果指標(売上額、契約数、販売数など)× 歩合率(%)」です。例えば、月間売上100万円で歩合率10%の場合、歩合給は10万円となります。一部歩合制では、固定給20万円 + 歩合給10万円 = 総給与30万円のように計算されます。歩合率は業界や職種、個人の実績によって大きく異なり、営業職で5〜20%、タクシー運転手で50〜60%などが一般的です。

    厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」および各業界団体の調査データによれば、歩合率の設定は企業の裁量に委ねられていますが、労働基準法により最低賃金を下回ってはならないとされています。

    2024年度最低賃金(主要都市)
    • 東京都:1,163円
    • 大阪府:1,114円
    • 愛知県:1,077円
    • 神奈川県:1,162円
    • 全国加重平均:1,055円

    ※2024年10月時点

    歩合率の相場|職種別の目安

    歩合率は職種によって大きく異なり、営業職5〜20%、タクシー運転手50〜60%、美容師40〜50%、不動産営業3〜10%、保険営業20〜40%が一般的な相場です。

    職種によって売上規模や利益率が異なるため、歩合率も大きく変わります。タクシー運転手は売上に対する経費(ガソリン代、車両維持費)が高いため歩合率が高く設定されています。

    美容師は店舗の家賃や材料費を除いた売上に対する歩合のため、40〜50%が相場です。営業職は商品の利益率や契約規模によって歩合率が変動し、不動産や保険など高額商品ほど歩合率は低めに設定される傾向があります。

    職種 歩合率の相場 備考
    営業職(一般) 5〜20% 商品によって変動
    タクシー運転手 50〜60% 保障給あり
    美容師 40〜50% 個人売上ベース
    不動産営業 3〜10% 物件価格による
    保険営業 20〜40% 契約額による
    販売職(アパレル) 1〜3% 時給併用が多い
    販売職(家電) 2〜5% 高額商品ほど高率

    歩合制の給与例|具体的なシミュレーション

    一部歩合制(固定給20万円+歩合率10%)の場合、月間売上100万円で総給与30万円、売上200万円で総給与40万円となり、成果に応じて給与が増加します。

    【例1】固定給20万円 + 歩合率10%の営業職
    • 売上100万円→歩合給10万円→総給与30万円
    • 売上200万円→歩合給20万円→総給与40万円
    • 売上50万円→歩合給5万円→総給与25万円
    • 売上ゼロ→歩合給ゼロ→総給与20万円(固定給のみ)
    【例2】完全歩合制・歩合率50%のタクシー運転手
    • 売上50万円→歩合給25万円(保障給との比較で高い方を支給)
    • 売上80万円→歩合給40万円
    【例3】固定給15万円 + 歩合率40%の美容師
    • 個人売上50万円→歩合給20万円→総給与35万円
    • 個人売上100万円→歩合給40万円→総給与55万円

    各業界の平均的な給与体系および厚生労働省の賃金統計データに基づくシミュレーションです。実際の給与は企業や地域によって異なるため、あくまで参考値として提示しています。

    雇用形態別の歩合制|正社員・バイト・業務委託の違い

    歩合制は雇用形態によって法的保護や社会保険の適用が大きく異なります。正社員、アルバイト・パート、業務委託それぞれの特徴を理解し、自分に合った働き方を選ぶことが重要です。

    正社員の歩合制|社会保険や福利厚生は?

    正社員の歩合制では、社会保険(健康保険・厚生年金・雇用保険)や福利厚生は通常の正社員と同様に適用され、歩合給も社会保険料の計算対象となります。

    福利厚生(有給休暇、退職金、健康診断など)も通常の正社員と同様に適用されます。ただし、退職金制度は企業によって異なり、歩合給を含めるかどうかは就業規則による定めによります。

    アルバイト・パートの歩合制|時給との併用は可能?

    アルバイト・パートの歩合制では、時給と歩合給を併用することが可能であり、最低賃金法の適用も受けるため、時給換算で最低賃金を下回ってはなりません。

    アルバイト・パートでも歩合制を採用することは可能です。多くの場合、「時給 + 歩合給」という形で併用されます。例えば、アパレル販売員で「時給1,100円 + 売上の2%」といった形です。

    労働時間が短い場合(週20時間未満など)は社会保険の加入義務がない場合もありますが、労働基準法や最低賃金法の適用は受けられます。

    業務委託の歩合制|雇用契約との違いと注意点

    業務委託契約は雇用契約とは異なり、「仕事の完成」を約束する契約(請負契約)または「業務の遂行」を約束する契約(委任契約)です。労働基準法や最低賃金法の適用を受けないため、完全歩合制(成果報酬のみ)でも違法ではありません。

    ただし、実態が雇用関係である場合(指揮命令を受ける、勤務時間が指定される、他の仕事ができないなど)は「偽装請負」として違法となり、労働基準法が適用されます。業務委託の場合、社会保険の加入義務はなく、確定申告が必要です。

    業務委託(労働法適用外)の特徴
    • 仕事の進め方や時間を自分で決められる
    • 他の仕事と掛け持ち可能
    • 会社から指揮命令を受けない
    • 自分で確定申告が必要
    雇用契約(労働法適用)の特徴
    • 勤務時間や場所が指定される
    • 会社の指示に従う義務がある
    • 他の仕事が制限される
    • 源泉徴収される

    歩合制のメリット|従業員と企業それぞれの視点から

    歩合制は従業員側と企業側の双方にメリットがあります。成果主義の給与体系がもたらす利点を明確に理解し、歩合制の価値を正しく評価しましょう。

    従業員側のメリット|頑張った分だけ稼げる

    従業員側の最大のメリットは「努力や成果が直接給与に反映される」ことであり、スキルや工夫次第で高収入を得られる可能性があります。

    主なメリット
    • 成果次第で固定給の2〜3倍の収入を得られる可能性
    • 努力が給与に直結するため高いモチベーションを維持できる
    • 年齢や勤続年数に関係なく成果で評価される公平性
    • 営業スキルや接客スキルの向上が収入増につながる
    • 時間の使い方が比較的自由(営業職など)

    特に、若手でも成果次第で高収入を得られる点は大きな魅力です。厚生労働省「労働経済動向調査」、リクルートワークス研究所「働き方と満足度調査」によれば、歩合制労働者の仕事満足度は、成果が出ている場合は固定給労働者より高いことが報告されています。

    企業側のメリット|人件費の最適化と成果主義

    企業側のメリットは「売上に連動した人件費の最適化」「成果主義による組織の活性化」「優秀な人材の確保」という点です。

    主なメリット
    • 売上が少ない月は人件費を抑えられる(固定費の変動費化)
    • 成果を出す従業員のモチベーションが高まり、組織全体の生産性が向上
    • 能力主義・成果主義の文化が根付き、優秀な人材を引きつける
    • 固定給のみの企業と比べて、人件費の予測可能性が高まる(売上に比例するため)

    特に、売上変動が大きい業種(季節商品、不動産など)では、歩合制の導入により経営リスクを軽減できます。日本経済団体連合会「賃金制度に関する調査」によれば、歩合制を導入している企業の約70%が「生産性向上に効果があった」と回答しています(2024年度調査)。

    歩合制のデメリット|収入の不安定性とモチベーション管理

    歩合制には見過ごせないデメリットもあります。成果主義の給与体系がもたらすリスクと課題を明確に理解し、対策を講じることが重要です。

    従業員側のデメリット|収入が不安定になるリスク

    従業員側の最大のデメリットは「収入が不安定になる」ことであり、成果が出ない月は給与が大幅に減少し、生活設計が困難になるリスクがあります。

    主なデメリット
    • 月によって収入が大きく変動するため、住宅ローンや生活費の計画が立てにくい
    • 景気や季節変動の影響を受けやすく、自分の努力だけではコントロールできない要因で収入が減る
    • 成果が出ないとプレッシャーが大きく、ストレスや過労につながる
    • 固定給が低い(または無い)場合、最低賃金レベルの収入になるリスク
    • 歩合給が低い月が続くと、モチベーションが下がり、悪循環に陥る

    特に、完全歩合制の場合はこれらのリスクが顕著です。厚生労働省「労働経済動向調査」、日本労働研究機構「歩合制労働者の実態調査」によれば、歩合制労働者の約40%が「収入の不安定性」をデメリットとして挙げています。

    企業側のデメリット|従業員の離職リスク

    企業側のデメリットは「成果が出ない従業員の離職率が高い」「短期的な成果重視で長期的な顧客関係が損なわれる」というリスクです。

    主なデメリット
    • 成果が出ない従業員が早期に離職し、採用・教育コストが無駄になる
    • 短期的な売上を優先するあまり、顧客との長期的な信頼関係が損なわれる
    • チームワークよりも個人成績が優先され、職場の協力体制が弱まる
    • 成果を水増しする不正行為(押し込み販売、虚偽報告など)のリスク
    • 従業員間の収入格差が大きくなり、組織内の不満や対立が生じる

    これらのデメリットを放置すると、企業の信頼や組織文化が損なわれます。日本経済団体連合会「賃金制度に関する調査」、厚生労働省「雇用動向調査」によれば、歩合制を採用している企業の離職率は、固定給のみの企業より約1.5倍高いことが報告されています。

    デメリットを軽減する方法

    歩合制のデメリットを軽減するには、「固定給を適切な水準に設定する(一部歩合制の採用)」「チーム成績も評価に含める」「長期的な顧客満足度を評価指標に加える」などの工夫が有効です。

    デメリット軽減の具体策
    • 固定給を生活できる最低限のレベル(月20万円以上)に設定し、収入の安定性を確保する
    • 個人成績だけでなく、チーム全体の成績も評価に含めることで、協力体制を促進
    • 短期的な売上だけでなく、顧客満足度や継続率なども評価指標に加える
    • 歩合率に上限を設けず、努力が報われる仕組みを維持
    • 定期的な研修やコーチングで、成果が出ない従業員をサポート

    これらの工夫により、歩合制のメリットを活かしつつ、デメリットを最小限に抑えることができます。日本経済団体連合会「人事制度の実態調査」によれば、一部歩合制を採用し、かつ固定給を適切に設定している企業では、離職率が完全歩合制企業の約半分に抑えられています。

    よくある質問(Q&A)

    当サイトの管理者
    牧江重徳

    社会保険労務士法人 牧江&パートナーズ
    会長 牧江 重徳(まきえ しげのり)

    【資格】
    特定社会保険労務士
    行政書士
    社会福祉士・介護福祉士・ケアマネージャー

    関西大学卒業後、約10年間の会社勤務を経て、昭和52年8月、社会保険労務士として独立しました。
    同年10月には行政書士事務所を併設。平成31年には事務所を法人化しました。

    「常にお客様と共にあり」をモットーとして、多くのお客様からご愛顧を賜り、創業50周年を迎えます。
    現在、職員60人を擁する西日本有数の社会保険労務士法人に成長しました。

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