通勤手当の勘定科目まとめ|仕訳・消費税・非課税の考え方

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通勤手当の勘定科目まとめ|仕訳・消費税・非課税の考え方

通勤手当を経理処理する際、勘定科目で迷う方は多いのではないでしょうか。
「福利厚生費」「給与」「旅費交通費」のどれに該当するのか、判断が難しいケースもありますよね。

結論から言うと、通勤手当の勘定科目に法律上の規定はなく、どれを使っても問題ありません。
重要なのは、一度決めた勘定科目を継続して使用することです。

本記事では、通勤手当の勘定科目を実務目線で詳しく解説。
勘定科目の選び方から課税・非課税の考え方、消費税の扱い、役員や個人事業主の仕訳例まで網羅しています。

2025年4月から適用されている非課税限度額の改正内容についても取り上げているので、ぜひ参考にしてください。

この記事で分かること
  • 通勤手当の勘定科目は福利厚生費・給与・旅費交通費のいずれも使用可能
  • 課税・非課税で勘定科目を分ける必要はない
  • 通勤手当は消費税の課税仕入れに該当する
  • 役員の通勤手当は定期同額給与の対象外
  • シーン別の具体的な仕訳例

Table of Contents

    通勤手当の勘定科目は、法律上の規定がありません。
    そのため、「福利厚生費」「給与手当」「旅費交通費」のいずれも使用可能です。

    それぞれの勘定科目には特徴があり、会社の管理方法や給与計算ソフトの仕様によって最適な選択が異なります。

    重要なのは、一度決めた勘定科目を継続して使用することです。
    会計原則の「継続性の原則」により、正当な理由なく会計処理を変更することは避けるべきとされています。

    通勤手当の勘定科目の選択肢
    • 福利厚生費:従業員の福利向上を目的とした手当として位置づける場合
    • 給与手当:給与明細で通勤手当として支給し、給与と一体管理する場合
    • 旅費交通費:交通費全般を一つの勘定科目で管理したい場合

    通勤手当を「福利厚生費」で処理するケース

    福利厚生費は、従業員の福利向上を目的とした費用を計上する勘定科目です。
    全社員一律の交通費補助として支給する場合や、福利厚生的な意味合いが強い場合に使用されます。

    福利厚生費として処理するメリットは、通勤に関する費用を従業員への福利厚生として明確に位置づけられる点です。
    ただし、税務調査の観点からは「旅費交通費」の方が説明しやすいとされる場合もあります。

    【福利厚生費で処理する場合のポイント】

    • 消費税の課税仕入れとして処理できる(基本給等とは区別が必要)
    • 支給形態ではなく性質で判断し、通勤目的であれば福利厚生費として処理可能
    • 法定外福利費としての位置づけとなる

    通勤手当を「給与」で処理するケース

    給与明細で「通勤手当」として支給し、給与と一体で処理する場合は、「給与手当」または独立した「通勤手当」を使用します。
    給与計算ソフトで給与と一緒に処理されることが多く、源泉徴収や社会保険料計算の観点から給与と一体管理が便利です。

    ただし、消費税の税区分が異なるため、基本給等とは区別して仕訳する必要があります。
    通勤手当は消費税の「課税仕入れ」ですが、給与は「対象外」なので税区分の区別が必須です。

    【給与で処理する場合のポイント】

    • 給与明細上で「非課税支給額」として給与と別に記載されるため、管理しやすい
    • 源泉徴収や社会保険料計算の際に給与と一体で管理できる
    • 消費税の税区分は給与(対象外)とは別に「課税仕入10%」として設定が必要

    通勤手当を「旅費交通費」で処理するケース

    交通費全般を一つの勘定科目で管理したい場合や、出張旅費と合わせて管理する場合は「旅費交通費」を使用します。
    旅費交通費は業務に関連する移動費用全般を含む勘定科目であり、通勤費も含めて一元管理できます。

    消費税の課税仕入れとして処理しやすく、給与との混同を避けられるため、多くの企業で採用されている方法です。
    経費精算的な性質が明確になり、税務調査でも説明しやすいというメリットがあります。

    【旅費交通費で処理する場合のポイント】

    • 出張旅費や営業交通費と合わせて一元管理できる
    • 消費税の課税仕入れとして処理しやすい
    • 経費精算システムで他の交通費と同じ扱いができる

    勘定科目選択の判断フローチャート

    勘定科目は税務上どれを使っても問題ありません。
    会社の会計方針・給与計算方法・管理のしやすさで選び、一度決めたら継続して使用することが重要です。

    判断基準として、以下の目安が参考になります。

    処理方法 おすすめの勘定科目 特徴
    給与ソフトで一括管理 給与手当 給与計算と連動しやすい
    経費精算で処理 旅費交通費 他の交通費と一元管理
    福利厚生として位置づけ 福利厚生費 福利厚生の一環として明示

    いずれの勘定科目を選んでも、消費税の課税仕入れ処理ができれば経理上の問題はありません。
    税務上はどの勘定科目を使っても損金算入が認められます。

    通勤手当の勘定科目と課税・非課税の関係

    通勤手当には所得税の「非課税限度額」が設定されており、限度額以内であれば所得税が課税されません。

    また、2025年11月の法改正でマイカー通勤の非課税限度額が引き上げられました。
    2026年4月からは駐車場代も非課税対象に追加される予定です。

    なお、勘定科目は課税・非課税に関係なく同じものを使用して問題ありません。
    課税分と非課税分で勘定科目を分ける必要はなく、給与計算上の区分とは別の概念です。

    通勤手当の課税・非課税のポイント
    • 公共交通機関は月額15万円まで非課税
    • 非課税限度額を超えた部分は給与所得として課税
    • 勘定科目は課税・非課税で分ける必要なし

    通勤手当の非課税限度額一覧

    通勤手当の非課税限度額は、通勤手段によって異なります。

    公共交通機関(電車・バス)で通勤する場合は月額15万円まで非課税です。
    マイカー通勤は片道の通勤距離に応じて段階的に設定されており、2025年4月から引き上げられました。

    通勤手段 非課税限度額(月額)
    公共交通機関(電車・バス) 150,000円
    マイカー通勤(片道2km以上10km未満) 4,200円
    マイカー通勤(片道10km以上15km未満) 7,300円
    マイカー通勤(片道15km以上25km未満) 13,500円
    マイカー通勤(片道25km以上35km未満) 19,700円
    マイカー通勤(片道35km以上45km未満) 25,900円
    マイカー通勤(片道45km以上55km未満) 32,300円
    マイカー通勤(片道55km以上) 38,700円

    2025年11月19日に所得税法施行令の一部を改正する政令が公布。
    2025年4月1日以後に支払われるべき通勤手当に遡及適用されています。
    ガソリン価格の高騰や物価上昇を踏まえた11年ぶりの改正です。

    2026年4月からは、100km以上の新区分(上限66,400円)と駐車場代の非課税化(月5,000円上限)が予定されています。

    非課税限度額を超えた通勤手当の扱い

    非課税限度額を超えた部分は「給与所得」として課税され、源泉徴収の対象となります。
    勘定科目は変更不要です。
    ただし、給与計算上は課税分と非課税分を区分して管理しなければなりません。

    給与明細では「非課税支給額」と「課税支給額」を分けて記載し、年末調整では課税分を含めて計算します。
    なお、2025年の改正で非課税限度額が引き上げられた場合、
    過去に課税処理した分について年末調整で精算が必要になることがあります。

    【非課税限度額を超えた場合の処理】

    • 超過分は給与所得として源泉徴収の対象
    • 給与明細で課税分と非課税分を区分して記載
    • 勘定科目は変更不要(会計上は同じ勘定科目で処理可能)
    • 年末調整で課税分を含めて精算

    課税分と非課税分で勘定科目は変わるのか

    勘定科目を分ける必要はありません。
    通勤手当は課税分・非課税分に関係なく同じ勘定科目(旅費交通費、給与手当など)で処理します。

    勘定科目は経理上の分類であり、税務上の課税・非課税とは別の概念です。
    消費税の課税仕入れとしては、所得税の非課税限度額を超えていても全額が対象となります。
    会計ソフトでは消費税区分で管理するため、勘定科目を分ける実務上のメリットは少ないでしょう。

    ただし、補助科目や摘要で区分管理することはできます。
    管理上の必要に応じて「通勤手当(非課税)」「通勤手当(課税)」のように補助科目を設定することも一つの方法です。

    通勤手当の勘定科目と消費税の仕訳

    通勤手当は消費税の「課税仕入れ」に該当し、仕入税額控除の対象となります。
    所得税の非課税限度額を超えていても、消費税上は全額が課税仕入れです。

    インボイス制度導入後も「出張旅費等特例」により、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます。
    従業員に公共交通機関からインボイスを提出させる必要はありません。

    通勤手当と消費税のポイント
    • 通勤手当は課税仕入れに該当する
    • 消費税区分は「課税仕入10%」で処理
    • インボイスは不要(出張旅費等特例の適用)

    通勤手当に消費税がかかる理由

    通勤手当は従業員が支払った交通費(電車賃、ガソリン代など)の実費精算として支給するものです。
    その交通費には消費税が含まれているため、課税仕入れとして処理します。

    消費税法基本通達11-2-2では、「通勤に通常必要と認められる部分の金額」は課税仕入れに該当すると明記されています。
    電車賃やガソリン代は消費税の課税対象取引です。
    その精算である通勤手当も課税仕入れとなります。

    なお、住居手当は事業遂行上直接必要なものといえず課税仕入れに該当しませんが、通勤手当は該当します。
    この点が他の手当との違いです。

    通勤手当の消費税区分と仕訳例

    通勤手当は「課税仕入10%」として処理します。
    所得税の非課税限度額を超えていても、消費税上は全額が課税仕入れです。
    通勤手当は給与とは別に消費税区分を設定する必要があります(給与は「対象外」)。

    具体的な仕訳例は以下のとおりです。

    借方 金額 貸方 金額 消費税区分
    旅費交通費 20,000円 現金 20,000円 課税仕入10%

    消費税法基本通達11-2-2により、所得税の非課税限度額とは関係なく全額が課税仕入れとなります。
    会計ソフトで仕訳を入力する際は、消費税区分を正しく設定することが重要です。

    インボイス制度と通勤手当の関係

    通勤手当は「出張旅費等特例」により、インボイス(適格請求書)がなくても帳簿のみの保存で仕入税額控除が可能です。
    従業員に公共交通機関から交付を受けたインボイスを提出させる必要はありません。

    出張旅費等特例では、従業員等に支給する通勤手当について帳簿のみの保存で仕入税額控除を認めています。
    帳簿に記載すべき事項は以下の5点です。

    【帳簿への記載事項】

    • 課税仕入れの相手方の氏名または名称
    • 課税仕入れを行った年月日
    • 課税仕入れに係る資産または役務の内容
    • 課税仕入れに係る支払対価の額
    • 課税仕入れが通勤手当の支給に該当する旨

    なお、この特例は公共交通機関特例(3万円未満)とは別の特例として適用されます。
    3万円以上の通勤手当であっても、出張旅費等特例により帳簿のみの保存で対応可能です。

    役員・個人事業主の通勤手当と勘定科目

    役員に支給する通勤手当は、非課税限度額内であれば定期同額給与の判定対象外となります。
    役員報酬とは別に経理することで損金算入が可能です。

    一方、個人事業主は自分自身への通勤手当を経費計上できませんが、従業員に支給することはできます。

    役員・個人事業主の通勤手当のポイント
    • 役員の通勤手当は定期同額給与の判定対象外
    • 役員にも従業員と同じ非課税限度額が適用
    • 個人事業主は自分への通勤手当を経費にできない

    役員の通勤手当は定期同額給与になるか

    非課税限度額内の通勤手当は定期同額給与の判定対象外となります。
    役員報酬とは別に「旅費交通費」などとして経理することで、定期同額給与の要件を満たさなくても損金算入が可能です。

    通勤手当は職務執行の対価ではなく実費であるため、役員報酬の一部として扱われません。
    役員報酬とは別の経費として適正に支給すれば、定期同額給与の問題を回避できます。
    また、株主総会決議も不要です。

    ただし、非課税限度額を超える部分については、定期同額給与の要件を満たすか否かの判断が必要になる場合があります。

    役員の通勤手当に上限はあるか

    従業員と同じ非課税限度額が適用されます(公共交通機関:月15万円、マイカー:距離別)。
    役員であっても所得税法上の非課税限度額は従業員と同じです。

    ただし、不相当に高額な場合は、法人税法第34条の「不相当に高額な部分」に該当する可能性があります。
    超過分が課税対象となるだけでなく、法人税法上の損金不算入リスクがあるため注意しましょう。
    グリーン車の定期券支給などが該当します。

    通勤手当規程を整備し、役員と従業員で同じ基準を適用することが望ましいでしょう。

    個人事業主は通勤手当を経費にできるか

    個人事業主は自分自身への通勤手当を経費計上できません。

    自宅から事業所への移動は必要経費にならず、「家事費(生活費の一部)」とみなされます。
    所得税法第45条により、家事費・家事関連費は必要経費に算入できません。
    ただし、事業に直接関連する交通費(営業先への移動など)は経費として認められます。

    また、従業員を雇用している場合、従業員への通勤手当支給も経費として認められます。
    マイカー通勤の場合は、事業用自動車として家事按分することで事業割合のみ経費化可能です。

    通勤手当の勘定科目別・仕訳例まとめ

    通勤手当の仕訳は、勘定科目の選択(旅費交通費・給与手当・福利厚生費)と消費税区分(課税仕入10%)がポイントです。
    非課税枠内・超過分・半年分一括支給・実費精算など、シーン別の具体的な仕訳例を解説します。

    仕訳例のポイント
    • 非課税枠内の通勤手当は課税仕入10%で処理
    • 非課税限度額超過分も勘定科目は同じでOK
    • 半年分の定期代は前払費用として処理も可能
    • 実費精算は旅費交通費で処理することが多い

    従業員への月額通勤手当の仕訳(非課税枠内)

    非課税枠内の通勤手当は、「旅費交通費」または「福利厚生費」で処理し、消費税区分は「課税仕入10%」とします。
    給与と一緒に支給する場合でも、消費税の処理上は区別が必要です。

    借方 金額 貸方 金額 消費税区分
    旅費交通費 20,000円 現金(または未払金) 20,000円 課税仕入10%

    消費税法基本通達11-2-2により、通勤手当は課税仕入れに該当します。

    給与(対象外)とは消費税区分が異なるため、仕訳上の区別が必要です。
    会計ソフトでは「給与支給」と「通勤手当支給」を別々に入力することが多いでしょう。

    非課税限度額を超えた通勤手当の仕訳

    非課税限度額を超えた部分も、勘定科目は同じ「旅費交通費」等で処理して問題ありません。
    消費税は全額が課税仕入れです。

    ただし、給与計算上は課税分と非課税分を区分し、課税分は源泉徴収の対象とします。

    借方 金額 貸方 金額 消費税区分 備考
    旅費交通費 180,000円 現金 180,000円 課税仕入10% 内150,000円非課税、30,000円課税

    消費税上は所得税の非課税限度額に関係なく全額が課税仕入れとなります。
    勘定科目を分ける必要はありませんが、摘要欄で区分を明記すると管理しやすいでしょう。

    定期代を半年分まとめて支給した場合の仕訳

    原則として「前払費用」として資産計上し、毎月費用に振り替えます。
    ただし、重要性の原則により金額が少額な場合は、支給時に全額費用計上することも可能です。

    方法1:前払費用として処理(原則)

    タイミング 借方 金額 貸方 金額
    支給時 前払費用 120,000円 現金 120,000円
    毎月末 旅費交通費 20,000円 前払費用 20,000円
    方法2:支給時全額費用計上(簡便法)
    タイミング 借方 金額 貸方 金額
    支給時 旅費交通費 120,000円 現金 120,000円

    企業会計原則の「重要性の原則」により、少額なものは簡便な処理が認められます。
    継続適用が重要であり、処理方法を毎期変更することは避けてください。

    実費精算の通勤費の仕訳

    都度精算(実費支給)の通勤費は「旅費交通費」で処理することが多いです。
    経費精算の形式をとるため、出張旅費と同様に扱う方が、実務上は整理しやすくなります。

    借方 金額 貸方 金額 消費税区分
    旅費交通費 5,000円 現金 5,000円 課税仕入10%

    経費精算システムで他の交通費と一元管理できます。
    定額支給の「通勤手当」とは性質が異なるため、勘定科目を分けることも可能です。

    通勤手当の勘定科目に関するよくある質問10選

    通勤手当の勘定科目や仕訳に関してよく寄せられる質問をQ&A形式でまとめました。
    当サイトの管理者
    牧江重徳

    社会保険労務士法人 牧江&パートナーズ
    会長 牧江 重徳(まきえ しげのり)

    【資格】
    特定社会保険労務士
    行政書士
    社会福祉士・介護福祉士・ケアマネージャー

    関西大学卒業後、約10年間の会社勤務を経て、昭和52年8月、社会保険労務士として独立しました。
    同年10月には行政書士事務所を併設。平成31年には事務所を法人化しました。

    「常にお客様と共にあり」をモットーとして、多くのお客様からご愛顧を賜り、創業50周年を迎えます。
    現在、職員60人を擁する西日本有数の社会保険労務士法人に成長しました。

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