昇給ありは嘘?本当の意味と上がらない理由4つ!平均額や法律まで徹底解説

makieoffice社労士コラム

昇給ありは嘘?本当の意味と上がらない理由4つ!平均額や法律まで徹底解説

求人票に「昇給あり」と書いてあるのに、実際には昇給しなかった経験はありませんか。

実は、「昇給あり」は昇給制度があることを意味するだけで、必ず昇給する保証ではありません。
この記事では昇給の平均額や相場、昇給しない理由、法律上の扱いまで詳しく解説します。

本記事を読めば、自分の昇給額が妥当かどうか判断でき、昇給がない場合の対処法もわかります。

この記事でわかること
  • 「昇給あり」の本当の意味と昇給制度の種類
  • 昇給額の平均・相場
  • 昇給ありなのに昇給しない4つの理由
  • 昇給しないのは違法?法律上の扱い
  • 昇給がない場合の対処法と転職判断基準

Table of Contents

    求人票に記載されている「昇給あり」という表記は、昇給制度が存在することを示しています。
    しかし、これは必ず昇給する保証ではありません。

    ここでは「昇給あり」の正しい意味と、混同しやすい用語との違い、昇給制度の種類について解説します。

    「昇給あり」の意味
    • 「昇給あり」の定義と求人票での意味
    • 昇給・昇格・昇進の違い
    • 昇給制度の6つの種類

    「昇給あり」の定義と求人票での意味

    「昇給あり」とは、給与が上がる制度が会社に存在することを意味します。
    ただし、これは「必ず毎年昇給する」という約束ではありません。

    労働基準法第89条では「昇給に関する事項」は就業規則の絶対的必要記載事項です。そのため、常時10人以上の労働者を使用する事業場では、昇給についての記載が義務付けられています。

    「昇給あり」という表記は、社内に昇給制度さえあれば、「業績次第で昇給なし」という条件付きでも使用可能です。
    つまり、求人票の言葉を鵜呑みにするのではなく、「実際に昇給するかどうかは、会社の業績やあなた自身の評価によって決まる」という前提で捉えておく必要があります。

    厚生労働省の調査によると、2024年に昇給を実施した企業は91.2%です。
    逆にいえば、昇給を実施しない企業も8.8%存在するということになります。

    「昇給あり」の注意点
    • 昇給制度の有無を示すだけで、必ず昇給する保証ではない
    • 具体的な金額・実施率・条件は企業ごとに異なる
    • 就業規則や面接時に具体的な昇給条件を確認することが重要

    昇給・昇格・昇進の違い

    昇給・昇格・昇進は似ている言葉ですが、それぞれ異なる意味を持っています。

    昇給は基本給が増えることを指します。
    定期昇給や人事評価に基づく昇給など、さまざまな形態があります。

    昇格は社内の等級・グレードが上がることを指します。
    職能資格制度を採用している企業では、資格等級が上がることで昇格となります。

    昇進は課長・部長など役職が上がることを指します。
    管理職への昇進は、責任の増大とともに給与アップを伴うケースが多いです。

    昇格や昇進に伴って昇給することは多いですが、定期昇給とは別の仕組み。
    「昇給差額」とは昇給前後の給与の差額を指し、残業手当の計算などに影響する場合があります。

    用語 意味
    昇給 基本給が増えること 月給25万円→26万円
    昇格 社内の等級・グレードが上がること 等級3→等級4
    昇進 役職が上がること 係長→課長

    昇給制度の6つの種類

    昇給制度には複数の種類があり、企業によって採用する制度は異なります。

    近年はトヨタ自動車など大企業でも定期昇給を廃止・見直す動きが。
    成果主義の浸透により、年齢や勤続年数だけでなく、個人の成果や能力に応じた昇給制度を採用する企業が増えています。

    主な昇給制度は以下の6種類です。

    昇給制度の種類 内容
    定期昇給 毎年決まった時期(年1回が一般的)に行われる昇給
    臨時昇給 業績好調時など、臨時に行われる昇給
    自動昇給 勤続年数や年齢に応じて自動的に上がる昇給
    考課昇給 人事評価の結果に基づく昇給
    普通昇給 毎月の成績等で評価される昇給
    特別昇給 特別な功績に対して行われる昇給

    定期昇給とベースアップの違い

    定期昇給は個人の給与が年齢・勤続年数・評価に応じて上がることを言います。
    ベースアップ(ベア)は賃金テーブルそのものを引き上げ、全社員の給与水準を底上げすることを指します。

    項目 定期昇給 ベースアップ
    内容 個人が賃金テーブルの階段を1段上がる 賃金テーブル自体を引き上げる
    対象 条件を満たした個人 原則として全社員
    人件費総額 大きく変わらない 増加する
    実施の判断 制度に基づく 企業の判断(義務ではない)

    注意したいのは、ニュースで報じられる「賃上げ率5.33%」「平均妥結額19,210円」といった数字が、定期昇給とベースアップを合計した額である点です。定期昇給だけを取り出すと、一般的には基本給の1.5〜2%程度にとどまります。

    そのため、自分の昇給額をニュースの数字と単純に比較すると、実際より低く感じられる可能性があります。会社に確認する際は、昇給額の内訳が「定期昇給分」と「ベースアップ分」に分かれているかを聞いてみると、より正確に判断できます。

    「昇給あり」なのに昇給しない4つの理由

    「昇給あり」と書かれているのに実際は昇給しないケースがあります。
    その背景を理解することで、適切な対処が可能になります。

    昇給ありなのに上がらない4つの理由
    • 就業規則・給与規程に具体的なルールがない
    • 業績連動型で会社の業績が悪い
    • 人事評価で基準を満たしていない
    • バイト・パートの昇給が実施されないケース

    就業規則・給与規程に具体的なルールがない

    就業規則に「業績により昇給を行う場合がある」等の曖昧な記載があると、会社の裁量で昇給が見送られるケースがあります。

    労働基準法第89条では「昇給に関する事項」の記載は義務ですが、具体的な金額・条件までは義務付けていません。
    そのため「ただし、会社の業績によっては昇給を行わない」というただし書きがあれば、昇給しなくても違法ではありません。

    昇給額や昇給率の詳細な昇給テーブルまで就業規則に記載している企業は少数派です。
    曖昧な記載の場合、実際に昇給があるかどうかは入社してみないとわからないケースもあります。

    就業規則で確認すべきポイント
    • 昇給の時期(年1回など)が明記されているか
    • 昇給の条件(業績、評価など)が記載されているか
    • 「昇給を行わない場合がある」等のただし書きがないか
    • 具体的な昇給額や昇給率の目安が示されているか

    業績連動型で会社の業績が悪い

    業績連動型の昇給制度では、会社業績が悪いと「年1回の昇給あり」でも昇給が見送られることがあります。

    近年は成果主義・業績連動型の昇給制度を採用する企業が増加しています。
    厚生労働省の調査では、2024年に昇給を「実施しない」企業は2.3%、「未定」は6.4%存在します。

    業績悪化時に昇給を見送ることは、就業規則に記載があれば違法ではありません。
    ただし、業績が回復しても昇給が戻らない場合は、会社に確認する価値があります。

    人事評価で基準を満たしていない

    考課昇給制度では、人事評価の結果次第で昇給額がゼロになることもあります。
    評価基準を満たしていないと昇給対象外となる場合があります。

    評価ランクが低い場合、昇給なし・据え置きとなる企業もあります。
    評価基準や昇給との連動方法が不透明な場合、従業員は昇給しない理由がわからないことがあります。

    昇給しない理由を知りたい場合は、上司や人事部門に確認することをおすすめします。
    評価基準を理解することで、翌年以降の昇給に向けた行動計画が立てられます。

    バイト・パートの昇給が実施されないケース

    バイト・パートは正社員と異なり、昇給制度の対象外だったり、条件が厳しかったりするケースが多いです。

    パートタイム・有期雇用労働法では「昇給の有無」の明示義務がありますが、昇給の実施義務はありません。
    同一労働同一賃金の原則があっても、昇給制度自体がなければ適用されません。

    非正規雇用の昇給は企業の任意であり、制度があっても条件(勤続年数等)を満たさないと実施されにくい傾向があります。

    バイト・パートの昇給で確認すべきこと
    • 雇用契約書に昇給の有無が明記されているか
    • 昇給の条件(勤続年数、評価など)は何か
    • 正社員と同様の仕事をしている場合は待遇差の理由を確認

    昇給ありで昇給しないのは違法?法律上の扱い

    「昇給あり」と記載されているのに昇給しない場合、法律上どのような扱いになるのでしょうか。
    ここでは違法となるケースとならないケースを解説します。

    昇給しないのは違法?
    • 昇給なし自体は原則違法ではない
    • 昇給しないと違法になる3つのケース
    • 「昇給あり」と書いて昇給しないのは嘘になる?

    昇給なし自体は原則違法ではない

    昇給制度を設けないこと自体は法律違反ではありません。
    昇給は法律上の義務ではないからです。

    労働基準法は最低賃金を定めていますが、昇給を義務付けてはいません。
    就業規則に「昇給に関する事項」の記載は義務ですが、「昇給なし」という記載も法律上は認められています。

    厚生労働省の調査によると、約12%の企業が昇給制度を設けていません。
    昇給制度の有無・内容は労働契約によって定められ、企業の裁量に委ねられています。

    昇給しないと違法になる3つのケース

    以下の3つのケースでは、昇給しないことが違法となる可能性があります。

    昇給しないと違法になる3つのケース
    • 就業規則に「毎年昇給する」と明記されているのに昇給しない(労働契約法第9条違反)
    • 求人票に「昇給あり」と記載して実態と大きく乖離する(職業安定法第65条違反の可能性)
    • 特定の従業員だけ昇給させないなど差別的取扱い(労働基準法第3条違反)

    これらに該当する場合は、労働基準監督署や労働局に相談することができます。

    「昇給あり」と書いて昇給しないのは嘘になる?

    昇給制度が存在すれば「嘘」とは言えませんが、実態と乖離が大きい場合は問題になりうる可能性があります。

    職業安定法第65条では「虚偽の広告」「虚偽の条件」での労働者募集は罰則対象。
    6ヶ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が科される可能性があります。

    求人票と実態が異なるという相談が、年間3,297件ハローワーク求人ホットラインに寄せられています。
    裁判では、求人票記載の労働条件が労働契約の内容と判断されたケースも。

    求人票の「昇給あり」と実態が大きく異なると感じた場合は、まず会社に確認しましょう。
    それでも解決しない場合はハローワークや労働基準監督署に相談することをおすすめします。

    昇給ありの場合の平均額・相場はどれくらい?

    自分の昇給額が妥当かどうかを判断するために、最新の平均昇給額と相場を確認しましょう。

    昇給ありの場合の相場
    • 日本企業の昇給額の平均(全体・業種別・規模別)
    • 昇給率は何パーセントが相場?
    • 昇給3,000円・5,000円は妥当?金額別の評価

    日本企業の昇給額の平均(全体・業種別・規模別)

    2024年の平均昇給額は、大企業で約19,000円、中小企業で約10,700円と、企業規模により大きな差があります。

    経団連の2024年春闘最終集計によると、大手企業135社の平均妥結額は19,210円(アップ率5.58%)でした。
    一方、中小企業375社の平均妥結額は10,712円(アップ率4.01%)となっています。

    厚生労働省「令和6年賃金引上げ等の実態に関する調査」によると、2024年の民間主要企業の春季賃上げ妥結額は17,415円、賃上げ率5.33%。
    1991年以来33年ぶりの高水準となりました。

    企業規模・業種 平均昇給額 昇給率
    大企業(500人以上) 19,210円 5.58%
    中小企業(500人未満) 10,712円 4.01%
    製造業 19,636円 5.79%
    非製造業 17,969円 5.01%

    昇給率は何パーセントが相場?

    2024年の昇給率は、大企業で5.58%、中小企業で4.01%が平均です。
    過去の相場は1.5〜2.5%程度でしたが、近年は物価上昇を背景に大幅に上昇しています。

    2024年の賃上げ率5.33%は1991年以来33年ぶりの5%台。
    今後も物価上昇や人手不足を背景に、賃上げ傾向は続くと予想されています。

    業種別にみると、昇給率には大きな差があります。

    業種 昇給率
    鉱業・採石業・砂利採取業 5.9%
    金融業・保険業 4.6%
    製造業 4.4%
    学術研究・専門技術サービス業 4.4%
    教育・学習支援業 2.7%
    医療・福祉 2.5%

    昇給3,000円・5,000円は妥当?金額別の評価

    2024年の水準では、3,000円は平均を大きく下回り、5,000円でも平均以下です。
    10,000円以上であれば平均的な水準といえます。

    ただし、2023年以前の相場(5,000〜7,000円程度)では5,000円は平均的な水準でした。
    業種・企業規模・個人の評価によって適正額は異なるため、一概に判断することはできません。

    自分の昇給額が妥当かどうかは、同業他社の水準や自社内での評価を確認することが重要です。
    昇給額に不満がある場合は、まず昇給の基準や評価方法を会社に確認してみましょう。

    中小企業の平均昇給額10,712円と比較すると、以下のような評価になります。

    昇給額 平均との比較 評価
    3,000円 約28% 平均を大きく下回る
    5,000円 約47% 平均以下
    10,000円 約93% 平均的
    15,000円 約140% 平均以上

    昇給がない・少ない場合の対処法

    昇給がない、または少ない場合にどう対処すべきか、具体的な方法を解説します。

    昇給がない場合の対処法
    • 会社に昇給の理由・基準を確認する
    • 昇給交渉のポイントと伝え方
    • 転職を検討すべき判断基準
    • 昇給なしでもモチベーションを保つ方法

    会社に昇給の理由・基準を確認する

    まずは上司や人事に昇給の基準・理由を確認することが第一歩です。
    評価制度や昇給条件を理解することで、今後の対策が立てやすくなります。

    パートタイム・有期雇用労働法では、待遇差の理由を説明する義務が事業主に課されています。
    昇給しない理由が「業績」なのか「個人評価」なのかで対処法が変わります。

    確認すべきポイント
    • 昇給の評価基準は何か
    • 今回昇給しなかった理由は何か
    • 次回昇給するために必要なことは何か
    • 同僚と比較して自分の評価はどうか

    昇給交渉のポイントと伝え方

    昇給交渉では実績の可視化、市場価値の提示、タイミングの見極めが重要。
    感情的ではなく、客観的なデータに基づく交渉が効果的です。

    自分の貢献・成果を数値化して示すことで説得力が増します。
    同業他社の給与水準や転職市場での自分の市場価値を把握しておくことも大切です。

    評価面談の時期や業績発表後など、交渉に適したタイミングを選びましょう。

    転職を検討すべき判断基準

    以下の条件に当てはまる場合は、転職を検討する価値があります。

    転職を検討すべき判断基準
    • 3年以上昇給がない
    • 業界平均を大きく下回る給与水準
    • 将来的な昇給の改善見込みがない
    • 交渉しても会社の対応が変わらない

    転職による年収アップ成功者の平均アップ額は約90万円です。
    2024年の転職者調査では、約60%が転職後に年収アップを実現しています。

    30代では年収アップ転職の平均アップ額が約138万円と最も高く、転職による収入アップを実現しやすい年代といえます。

    昇給なしでもモチベーションを保つ方法

    スキルアップ、副業、将来の転職準備など、昇給以外の目標設定が有効です。
    給与だけでなく、キャリア全体で価値を高める視点を持ちましょう。

    モチベーションを保つ方法
    • 資格取得やスキルアップで市場価値を高める
    • 副業で収入源を増やす
    • 現職での経験・実績を積み、転職市場での価値を高める
    • 給与以外のやりがい(仕事内容、人間関係など)を見つける

    昇給ありに関するよくある質問

    最後に、昇給に関してよくある質問をまとめました。

    当サイトの管理者
    牧江重徳

    社会保険労務士法人 牧江&パートナーズ
    会長 牧江 重徳(まきえ しげのり)

    【資格】
    特定社会保険労務士
    行政書士
    社会福祉士・介護福祉士・ケアマネージャー

    関西大学卒業後、約10年間の会社勤務を経て、昭和52年8月、社会保険労務士として独立しました。
    同年10月には行政書士事務所を併設。平成31年には事務所を法人化しました。

    「常にお客様と共にあり」をモットーとして、多くのお客様からご愛顧を賜り、創業50周年を迎えます。
    現在、職員60人を擁する西日本有数の社会保険労務士法人に成長しました。

    牧江税理士

    ~お気軽にご相談ください~

    社会保険労務士法人 牧江&パートナーズは50年で2,000件以上の企業様にご支援を提供しています。

    企業の人事・労務管理のプロとして、『企業防衛型』就業規則 の作成、労務トラブルの解決等のアドバイスから、社会保険・労働保険の事務手続き代行、給与計算、マイナンバーの管理までトータルにサポートいたします。

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